ひとりごと

あまり夫婦仲の良くない家庭で育った。

若くして結婚した母は、周囲を見る余裕がないまま３人の子供を育て、

狭い世界の中で自分なりの答えを手探りで見つけつつ進んできたのだろう。

あまり長く勤めた経験もなく、結婚してからは専業主婦。

ごく普通の会社員だった父の疲れを、想像することはできなかったのかもしれない。

 

それゆえか、不満はたまり、やがてそれはダイレクトに父に向けられる。

疲れて帰ってきた父は、当然反発する。

そりゃそうだ。私も働いてるから分かる事だけど、不満を抱えて空気が重い家になんて

帰りたくないもの。

 

けれど、外で働いた経験がほとんどない母には、それが理解できなかったのだろう。

それに、まだ２０歳。結婚への理想と現実のギャップにもとまどったのかもしれない。

 

＊　＊　＊

 

私が逃げるように家を出て、もう10数年。

それまで父への不満しか聞かされた事のなかった母から、初めて父を誉める言葉を聞いた。

「これまでは、お父さんが色々な事をしてくれても、それ以上に思いを持っていかれるような

出来事が色々とあって、そっちにばかり気を取られてた。

だけど、思い返してみると、お父さんは必ず結婚記念日や誕生日には

忘れずにプレゼントをくれてたんよ。

それも、何気ない会話の中で、欲しそうにしてたものを覚えてて、

忘れずに必ずくれてたんよ。」

 

「・・・・・・お母さん、そういう人はそうそういないよ。」

 

＊　＊　＊

 

残念ながら、産まれた女の子３人は、実家の姓を継ぐことなく、皆家を出てしまった。

これからは、結婚して初めてのなが～い夫婦２人っきりの生活だし、

互いの良いとこだけ見て、元気で長生きしてほしいな。

夫婦円満。それが一番。